ぺりぱりぽりぱり

ひとりごとのでかいおばさんが落語その他の舞台や美術展などの浅い感想文をかくブログ。鯛のうろこをとるときの擬音。

2023年3月23日 あやめcovers @繁昌亭

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3代目 桂あやめさん。

落語に興味がなかったときでさえ「女に落語は難しい?そうかなぁ?あの人がおるやん。楽しそうやん。」て感じでなんとなく知ってた、上方落語界にずっといてはる人。

本業の落語を聞くまえに、宝塚歌劇が好き過ぎて自分たちで演じるようになっちゃった噺家たちによる「花詩歌タカラヅカ」でご本人の芸をはじめて見た。芸達者やし楽しそうにやってていいなと思った。いつものよう分からん入り口から入っていく私の癖よ。

今回は、あやめさんはトリで最新作をネタおろしするものの、ほかの出演者たちがあやめさんの作品をカバーするという企画。

 

ネタの内容的には、化粧品ブランドのBAさんが主人公の「セールスウーマン」と、古典落語をアレンジした「雑俳」がわたし好みでした。

新作落語って作られてから中途半端に年月が経つと時代設定とかが古く感じる…という何かの文章を読んだことがあるんだけども、歌とか雑貨で昭和レトロだの平成レトロだの言ってるのと同じで、ちょっと古い感じでもそれはそういう味わいとしてイケるな!と思った。

登場人物たちの言動に普遍性があれば江戸時代が舞台の古典落語で笑えるんだから、昭和や平成が舞台の創作落語でも笑えるわな。そりゃ。

 

カバー演者的には、

桂二葉さんが劇中劇的にやった“朝顔につるべとられてもらい水したあざとい女子”が面白かったのでああいうのもっと見たい。

てのと

灘→京大→落語家の桂福丸さんが「古典落語に出てくる女性はだいたい“夫に付き従うおとなしい人”か、“あんた、何々せなあかんで!みたいな強い人”の2タイプだけど、あやめ師匠の落語には色んな性格の女性が出てくる」的なことを言っててこの人の視点すごくいい!って思ったので福丸さんの落語をまた聞きに行きたい。

てのが主な感想です。

 

んで、この日の演目のあやめさんオリジナルも聞いてみたい!と音源をさがしてみるも、ない。

あんだけ新作を作って、40年も噺家やってて、大阪文化祭賞ももらったってのに音源も映像も出してないやと!?実際に聞きに行かなあかんの!?

こりゃまた聞きにいきたい落語家さんが増えてしまって…こんなんばっかりで楽しいわー。

 

ちなみに活動弁士さん(坂本頼光さん)の芸を初めてみたんだけども面白かった!昔の無声映画が観れるのも楽しくて、ザ・娯楽!って感じ。

頼光さんに活弁してもらうためにあやめさんが2021年に作ったというイカレた無声映画『月光眞愛炎(つきのひかりまことのあいのひ)』も観た。

イカレてた。どうイカレてたのかは書けない。頼光さんもそれを語るには3時間は要ると言っていたが同意する。でもオモシロカッタです。

2023年3月18日 喜楽館 昼席

午前中に大阪中之島美術館で「大阪の日本画」展(後期)をみて→阪神梅田駅まで歩き→梅田駅のタリーズで昼食をとり→阪神線で新開地まで行って喜楽館の昼席をみるというべつにハードでもないスケジュールを敢行。

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新開地の商店街って美味しそうなお店は多々あるものの、喫煙OKなお店が多いですね……梅田のタリーズで食べといて良かったわ。

喜楽館は夜席に一度来たことがあるものの、昼席ははじめて。朝から雨が降っていたが、前に来たとき傘立てがなくて往生したので今回は折りたたみ傘で挑んだ。万全。

 

寄席はあれですね、全然知らなかった人に涙で溶けたアイメイクが目に入って痛くなるくらい笑わされたり

聞いたことある噺でもやる人によって笑いどころとかオチが違ったり、タイトルまで違ったり

お客が引くくらいの二日酔いで出てくる人がいたりして

ほんとにごった煮ですな。

 

あと、またもや前期高齢者層の男女混合グループに出くわしたのだけど、最近そういう感じのグループで色んなとこにお出かけする活動が流行ってんのかな?

わたしが同じような年になってもそんなグループに所属できてる予感がまったくしないけどなー。

きっと彼ら・彼女らは学生時代スクールカースト上位者だったに違いない

と思うなどした。

全然落語の感想書いてないね。でも書きようがないもんね。月曜お仕事がんばろ。1日働いたら祝日だ。

2023年3月某日 生誕100年 下村良之介展 @中信美術館

無料。

だからなのか…たまたま私の運が悪かったのか…

大声でのお喋りがやむことのない元気たっぷりの高齢男女のグループと同時に入館してしまいましてね……その元気さといったら小学生の遠足か?ってくらいでしてね。

 

できるだけ真っ白に近い心で見たいもんじゃないですか?絵画とかって。体験型の現代アートじゃないんだからさ…。

作品は良かった。

良かったんだけど大谷記念美術館ではじめてみた時のあの三作品を超えた感動がなかったのは

果たして作品に対する本当の感想なのかどうかが怪しい。邪念が多すぎて。

特にヤバかったのは

1階と2階に展示が分かれていて、2階に私がいたとき階段のところで大声でずーーっとお喋りしてる声が聞こえてきてていつまで経っても上がってこないとき。近くに来られても嫌やけどずっと階段におるのも気になる。

監視員の人も何回か様子を見るようなそぶりをしていた。

しんどい。

 

1月に別の会場で別の作家さんの無料の展覧会を見に行ったときは、作品がかわいい木彫りの動物たちなので親子連れが多くてこっちが対象外だと感じたのでしょうがないなって思ってすぐに出たけども

今回は違うやろー…泣くで……

 

でもまあお金払ってないからしょうがないのかな。

美術館のスタッフの方は親切でした。ハコはとても良いところで何の不満もありません。トイレもきれいだった。

無料でこんなに良いパンフレットもらって良いの?中信に口座もってないのに?ってくらいページ数のあるパンフもいただきました。

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表紙の黒い部分が自分の指紋でベタベタなのを誤魔化すための加工をした結果が上の写真です。

 

これを見た良心のある方は美術館では(たとえ無料であっても)静粛にお願いします。切実に。

 

2023年3月4日(土)新収蔵品展 @西宮市大谷記念美術館

何を隠そう、この大谷記念美術館で2016年に開催された『川村悦子展ーありふれた季節』が、美術展に行くのを好きになったきっかけといえる。

仕事で西宮市の行政施設を訪れて精神的にすんごく疲れていて、出入り口に貼ってあったポスターの蓮の絵にほうっとなった。そこを出てすぐにスマホで調べ、週末に見にいった。
知らない美術館の知らない人の展覧会に、未知の良い絵がいっぱいあった体験が病みつきになった。

ルーブル美術館展なのにモナリザ来てないんですけど!?詐欺ですか!?」レベルの美術展リテラシーしかなかった私が美術展好きになったのにはそんな経緯があったのですねー。

そしてその時は図録を買うという発想がなかったので数年後に後悔が押し寄せ、
美術館の在庫ももうないみたいで
ヤフオクとかしょっちゅう検索していたんだけども
ついこないだAmazonに一冊だけ出品してあったのを無事ゲット。ええでしょ〜この蓮!

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そんな川村悦子さんの新収蔵品も展示されるという今回の「新収蔵品展」。
わたしの好きな蓮シリーズはありませんでした…。

作家紹介のところに某寺院の襖絵を作製したと書いてあったので見にいきた〜いと思って帰宅してから検索してみたら
軽い気持ちで拝見しに行けないかんじの教団の所有でした🥺

 

そして今回の展覧会で一番心に残ったのは下村良之介さん

なんか日本画キュビズムなんすよ。(ネットの作家紹介には「キュビズム的」とか書いてある)

キュビズムの良さをあまりよくわかっていない私だけどこの人の絵は好きだわ!
(やったことないから適当こくけど→)ファイナルファンタジー感があって!
日本画キュビズムって実は相性がいいのでは?どっちも遠近法とか気にしなくて良さそうだし…。勝手なこと言ってますが…

[ID:614] 軍鶏絵馬 白 : 資料情報 | 収蔵品データベース | 西宮市大谷記念美術館

↑このリンク先は大谷記念美術館のデータベース
白い鶏の顔が私でも分かるくらいキュビズムしている

ほんでこれも帰宅してから検索したら、いま京都の中信美術館で回顧展やってる!生誕100年だって!入場無料!3月17日まで!もう直ぐ終わってまう!

…ということが判明したので、今週末に行けたら行くつもり。

美術展数珠つなぎ、楽しいっす

2023年2月23日(木・祝) 佐ん吉 朝の会 @繁昌亭

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まえに昼席でみて気になっていた桂佐ん吉さんの落語会に行ってきた。
10:30開演の朝席。

朝席は良いね。12時に終わるから出てすぐ天神橋筋商店街に行って混雑する直前にお昼ご飯が食べられる。

 

田辺聖子さんの百人一首解説本で知っていちど聞いてみたかった「ちはやふる」と、ラフカディオハーンの『怪談』に収録されている『かけひき』をもとに柳家喬太郎さんがつくった「雉政談」。
どちらもよかった。

「楽屋風景」と題された箸休め的なコーナーは、楽屋で着物をチェンジしながら佐ん吉さんと弥壱さんが話してる的な風景を座布団の横で繰り広げるというもの。

その中で「雉政談」は喬太郎さんが作ったけどさらに原作があるのだということを喋っていた。
原作があるから「喬太郎作」って書かなくていいよ〜と言ってくれたらしい。

 

「雉政談」、はじめはファンタジー色のほのぼのとした夫婦のはなしと思っていたら急に夫がサイコパスな本性を現し、御奉行様によるお裁きの場面に。
そこから原作と重なってくるのだが、「楽屋風景」では原作は何かということを明言していなかった。

偶然ちょっと前にKindleUnlimitedで光文社古典新訳文庫の『怪談』を読んでいたので「これは…!」ってなってワクワクした。

たしかに『かけひき』は『怪談』のなかでも特にインパクトの強い話だった。
ちなみに『怪談』は読了してません。後半の論文っぽいところでリタイヤしました…。

 

佐ん吉さんって顔が薄いせいか、喋ってるセリフの人格によって顔が変わって見える。特に夫が凡庸な顔からシームレスにサイコパス化してお裁きの場面では狂人になってたのがこわい。

お公家っぽい顔してるし破天荒な芸風でもなさそうなのに凄いや、と思ったけど
「米紫&吉之丞 マル秘ワールドニュース」(@米朝事務所YouTubeチャンネル)によると佐ん吉さんはえげつない下ネタを喋る人らしいし釣りの餌にするために増やしたミミズが愛おしくなってペットにしていたりするので
わりと闇を抱えた人なのかもしれない…
下ネタ苦手で彼のラジオととかはきかないでおこうと思っているのでほんとうのところは分からないです。すまんね。

 

 

2023年2月18日(土) 第121回上方落語をきく会 夜の部 @国立文楽劇場

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私は自称「桂二葉さんのファンではない」。テレビに出てるの見てないし。

しかし何故か二葉さんの出る落語会に自分比でわりとたくさん行っている。手ぬぐいも持ってる。

まぁあんだけ頑張ってはったら普通は応援したくなるもんです。

今回の「上方落語をきく会 夜の部」は「しごきの会」というヤバめのサブタイトルの“名物コーナー”とやらで
そのときの人気者の上方落語家にネタおろしを3つさせるというサディスティックな会。今回は桂二葉さんがしごかれ役。間に出てきて得意ネタを披露する「しごき役」は桂吉弥さんと師匠の桂米二さん。

このコンセプトをラジオ番組『なみはや亭』のタイムフリーで聴いてなんとなく面白そうやな〜吉弥さんも米二さんも出るし行って損はないやろな〜と思って軽い気持ちでチケットを取った。
こんなに大きくて歴史のある会とは全く意識してなかった。

ABCラジオで生放送されることすら知らなかった。“プロデューサーさんが腕を振るのに合わせて拍手するアレ”をはじめてやった。楽しかった。司会のアナウンサーさんは「ラジオのアナウンサーですね」って感じの聴き取りやすくていい声をしていた。

国立文楽劇場はロビーに椅子がいっぱいあっていい会場だった。

 

(開口一番)桃太郎 月亭秀都

生放送にはのらない時間に開口一番。
なみはや亭で放送されるらしい。

その後の演目の記憶が強烈なせいでやや薄れているのだが、面白かった。しかもなんか賢くなったような気になった。

 

味噌豆丁稚 桂二葉

ラジコのタイムフリーで聴いたらよくわかったのが、はじめのほう声が震え気味でしたね。致し方なしですね。

丁稚の貞吉が喋ってると思いながらきいてたらアレっ?旦那さんが喋ってるの?と混乱したところで本人が間違い(場面を飛ばしてた)に気付き修正。臨場感〜〜〜

そういえばわたし自身が噺家さんのネタおろしきくの初めてだったわ。

でもこれのおかげでその後は吹っ切れたというか、緊張感がほぐれた感じはした。主観ですが。

 

蛸芝居 桂吉弥

ツーブロックのイメージが強い吉弥さんが五分刈りくらいの坊主になって出たきたからザワ…ってなった。

今回の演目『蛸芝居』(タコが芝居をするおはなし)をやるために頭を刈ったと言っていたが本当なのだろうか…落語でも役作りしたりするのね…。

この『蛸芝居』、以前べつの噺家さんがやっててあんまり面白く感じなかったので噺自体が自分に合わないのかと思ってたけど違った。

吉弥さんの蛸芝居は面白かった。
噺家さんで冗長に思った部分もダレて感じなかったし「タコが何をしているのか」が見て聴いて分かったし面白かった。

同じ噺でも演じ手によって面白くなったりつまらなくなったりするってほんとうだったのね。

見栄を切るタコをやってる吉弥さんはほんとうに「タコ入道」って感じだった。さすがっす。

 

幽霊の辻(ゆうれんのつじ) 桂二葉

二葉さんって丁稚とか「アホ」とか酔っ払いとか得意技おおいなあ。とぼけたおばあさんも得意なんだろうなあ。

ちょんまげを掴んで鎌で首を「コキッ」てのが冤罪だわ陰惨だわグロいわ…なエピソードをコミカルにやってくれて、私のメンタルが助かった。

今回の三つのネタおろしのなかで一番好きな噺だった。

 

寄合酒 桂米二

犬好きなだけあって、犬に鯛の身をやった時の眼差しが優しげだった。

会場で聴いたときは私の体力的に少々しんどくて集中力が途切れていたのだが
ラジコのタイムフリーで聴いたら「やっぱ落語うまいわあ…」ってなる。

なんだろうな、人物の切り替え早ない?早いのにちゃんとパッて変わってるの凄ない?そんなに声とか大きく変わってないのに人物が切り替わったのが分かるの凄ない?

余談だが吉弥さんの蛸芝居と米二さんの寄合酒で立て続けにでてきた鯛のウロコを取る時の擬音が愉快でいたく気に入りまして
自分の身の回りの何かに使いたくなってあたらしく作ったのがこのブログ「ぺりぱりぽりぱり」です。ほんとうにどうでもいい衝動の余談でした。

 

らくだ 桂二葉

夜の会のメインディッシュ。

本人のtwitter見てたら「稽古してくれた師匠(誰なのかは内緒にしてた)からのOKは出たんだろうか…」とハラハラしたんだけどもそこはさすがプロ。ええ感じになってた。

落語詳しくないから分からんのだけど、らくだの兄貴分が途中ホンマに憎たらしいというか理不尽でやな奴だったので、それが「横柄やけど憎めん奴」て受け止められるようになればいいのかな…と思った。

初めてきく噺だからよう分からんのよね…

最終的には屑屋の独壇場になって兄貴分もドン引きなんでヨシ!って感じなんですけどね。屑屋が酔っ払ってからの二葉さんには「こっからはワイのテリトリーや!」みたいな安定感を感じた。あとはこのまま加速してサゲに激突じゃ!みたいな。

本人の気持ちは知らんけども。あくまで私の印象のお話でした。

 

エンディング

花束を渡しに来たラジオ局の偉い人のコメントが、まさか喋らされるとは思ってなかったんだろな〜感に溢れていた。

 

そのほか

司会のアナウンサー二人のうち女性の方が言ってたのは
自分の着物は「つる(二葉さんの十八番)が葉っぱを咥えてる柄」、お茶子さんの着物は「葉っぱの柄」で、どちらも二葉さんを応援する気持ちの表現とのこと。素敵やん…。

ラジコのタイムフリーでは、舞台裏でコメントしてる師匠の米二さんが終始優しげで素敵やんやった。

弟子にとるかとらんかで迷ってた時にとりあえずいっぺん稽古してみよってなって「ちょっとやらしたら面白かった」からとったってのも良い。

今回のネタ三つ全部米二さんじゃない人に習いにいったから「師匠が拗ねてる」って二葉さんが言っていたというのも
米二さんが二葉さんのことを「ちゃんと育てたからね」って言ってたのも
殺伐としたこのご時世に、師弟関係の暖かい側面をみることができてなんだか嬉しかった。

「落語は一人ではできない」というけど本当なんやなあ…と実感するイベントでした。