ぺりぱりぽりぱり

ひとりごとのでかいおばさんが落語その他の舞台や美術展などの浅い感想文をかくブログ。鯛のうろこをとるときの擬音。

2023年2月18日(土) 第121回上方落語をきく会 夜の部 @国立文楽劇場

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私は自称「桂二葉さんのファンではない」。テレビに出てるの見てないし。

しかし何故か二葉さんの出る落語会に自分比でわりとたくさん行っている。手ぬぐいも持ってる。

まぁあんだけ頑張ってはったら普通は応援したくなるもんです。

今回の「上方落語をきく会 夜の部」は「しごきの会」というヤバめのサブタイトルの“名物コーナー”とやらで
そのときの人気者の上方落語家にネタおろしを3つさせるというサディスティックな会。今回は桂二葉さんがしごかれ役。間に出てきて得意ネタを披露する「しごき役」は桂吉弥さんと師匠の桂米二さん。

このコンセプトをラジオ番組『なみはや亭』のタイムフリーで聴いてなんとなく面白そうやな〜吉弥さんも米二さんも出るし行って損はないやろな〜と思って軽い気持ちでチケットを取った。
こんなに大きくて歴史のある会とは全く意識してなかった。

ABCラジオで生放送されることすら知らなかった。“プロデューサーさんが腕を振るのに合わせて拍手するアレ”をはじめてやった。楽しかった。司会のアナウンサーさんは「ラジオのアナウンサーですね」って感じの聴き取りやすくていい声をしていた。

国立文楽劇場はロビーに椅子がいっぱいあっていい会場だった。

 

(開口一番)桃太郎 月亭秀都

生放送にはのらない時間に開口一番。
なみはや亭で放送されるらしい。

その後の演目の記憶が強烈なせいでやや薄れているのだが、面白かった。しかもなんか賢くなったような気になった。

 

味噌豆丁稚 桂二葉

ラジコのタイムフリーで聴いたらよくわかったのが、はじめのほう声が震え気味でしたね。致し方なしですね。

丁稚の貞吉が喋ってると思いながらきいてたらアレっ?旦那さんが喋ってるの?と混乱したところで本人が間違い(場面を飛ばしてた)に気付き修正。臨場感〜〜〜

そういえばわたし自身が噺家さんのネタおろしきくの初めてだったわ。

でもこれのおかげでその後は吹っ切れたというか、緊張感がほぐれた感じはした。主観ですが。

 

蛸芝居 桂吉弥

ツーブロックのイメージが強い吉弥さんが五分刈りくらいの坊主になって出たきたからザワ…ってなった。

今回の演目『蛸芝居』(タコが芝居をするおはなし)をやるために頭を刈ったと言っていたが本当なのだろうか…落語でも役作りしたりするのね…。

この『蛸芝居』、以前べつの噺家さんがやっててあんまり面白く感じなかったので噺自体が自分に合わないのかと思ってたけど違った。

吉弥さんの蛸芝居は面白かった。
噺家さんで冗長に思った部分もダレて感じなかったし「タコが何をしているのか」が見て聴いて分かったし面白かった。

同じ噺でも演じ手によって面白くなったりつまらなくなったりするってほんとうだったのね。

見栄を切るタコをやってる吉弥さんはほんとうに「タコ入道」って感じだった。さすがっす。

 

幽霊の辻(ゆうれんのつじ) 桂二葉

二葉さんって丁稚とか「アホ」とか酔っ払いとか得意技おおいなあ。とぼけたおばあさんも得意なんだろうなあ。

ちょんまげを掴んで鎌で首を「コキッ」てのが冤罪だわ陰惨だわグロいわ…なエピソードをコミカルにやってくれて、私のメンタルが助かった。

今回の三つのネタおろしのなかで一番好きな噺だった。

 

寄合酒 桂米二

犬好きなだけあって、犬に鯛の身をやった時の眼差しが優しげだった。

会場で聴いたときは私の体力的に少々しんどくて集中力が途切れていたのだが
ラジコのタイムフリーで聴いたら「やっぱ落語うまいわあ…」ってなる。

なんだろうな、人物の切り替え早ない?早いのにちゃんとパッて変わってるの凄ない?そんなに声とか大きく変わってないのに人物が切り替わったのが分かるの凄ない?

余談だが吉弥さんの蛸芝居と米二さんの寄合酒で立て続けにでてきた鯛のウロコを取る時の擬音が愉快でいたく気に入りまして
自分の身の回りの何かに使いたくなってあたらしく作ったのがこのブログ「ぺりぱりぽりぱり」です。ほんとうにどうでもいい衝動の余談でした。

 

らくだ 桂二葉

夜の会のメインディッシュ。

本人のtwitter見てたら「稽古してくれた師匠(誰なのかは内緒にしてた)からのOKは出たんだろうか…」とハラハラしたんだけどもそこはさすがプロ。ええ感じになってた。

落語詳しくないから分からんのだけど、らくだの兄貴分が途中ホンマに憎たらしいというか理不尽でやな奴だったので、それが「横柄やけど憎めん奴」て受け止められるようになればいいのかな…と思った。

初めてきく噺だからよう分からんのよね…

最終的には屑屋の独壇場になって兄貴分もドン引きなんでヨシ!って感じなんですけどね。屑屋が酔っ払ってからの二葉さんには「こっからはワイのテリトリーや!」みたいな安定感を感じた。あとはこのまま加速してサゲに激突じゃ!みたいな。

本人の気持ちは知らんけども。あくまで私の印象のお話でした。

 

エンディング

花束を渡しに来たラジオ局の偉い人のコメントが、まさか喋らされるとは思ってなかったんだろな〜感に溢れていた。

 

そのほか

司会のアナウンサー二人のうち女性の方が言ってたのは
自分の着物は「つる(二葉さんの十八番)が葉っぱを咥えてる柄」、お茶子さんの着物は「葉っぱの柄」で、どちらも二葉さんを応援する気持ちの表現とのこと。素敵やん…。

ラジコのタイムフリーでは、舞台裏でコメントしてる師匠の米二さんが終始優しげで素敵やんやった。

弟子にとるかとらんかで迷ってた時にとりあえずいっぺん稽古してみよってなって「ちょっとやらしたら面白かった」からとったってのも良い。

今回のネタ三つ全部米二さんじゃない人に習いにいったから「師匠が拗ねてる」って二葉さんが言っていたというのも
米二さんが二葉さんのことを「ちゃんと育てたからね」って言ってたのも
殺伐としたこのご時世に、師弟関係の暖かい側面をみることができてなんだか嬉しかった。

「落語は一人ではできない」というけど本当なんやなあ…と実感するイベントでした。